お待たせしました!「マレットファンの周りの輝く人」第12回。マレットファンの松尾久美さんにバンコク在住の堀川恵水さんがお話を伺いました。
「びっくりするくらいパワフルな日本人がいるんですよ!!」
友人からの一言が忘れられず、ずっとお会いしたい思っていたNGOマレットファンのお一人、松尾久美さん。ようやく願いが叶い、お会いできました。「昔から正義感の強いところがありましてね」と少し照れながら語る笑顔の奥に、国を超えての使命感と底なしのパワー。その源は何だろうと思い、タイでの活動のルーツをうかがってみました。
手づくり図書館から始まり、幼児教育を学ぶ会の開催や研修のコーディネートなど、活動の幅を次第に広げながら、ムアイさん、ギップさんと共に日々、夢のたねまき活動をすすめている久美さん。各地で子どもたちと向き合ってきた経験から、災害や貧困などで夢見ることを遠ざけられた厳しい環境の中でも、子どもたちには笑顔があることを知っています。そしてどんな環境にあろうと、子どもたちが明るい希望を持って羽ばたくために必要なこと。それは周りにいるおとなたちがまず笑顔になることだと久美さんは考えています。
子どもたちの変化を見て、自分が進む道を考えた
久美さんが子どもに関わる活動を始めたきっかけは、日本の子どもがタイの山岳民族の村でホームステイをするという、子ども向けスタディツアーに同行したことでした。支援を受ける側だと捉えられがちなタイで、驚いたことに、日本の子どもたちは逆に元気をもらって帰国していきました。そんな様子を見て、久美さんは大きな感銘を受けたのです。
大学で心理学を専攻、中学校のバスケ部のコーチをしながら、日本とタイの行き来が始まりました。そして2004年からは日本のNGOの一員として、バンコクのスラムやタイ北部の山岳少数民族、カンボジア国境地域にいる移民の子どもたちに奨学金や移動図書館を提供する活動に携わるようになりました。
絵本を初めて目にした子どもたちのきらきらした笑顔。久美さんは感動しました。一方で感じたのは、絵本も簡単に入手できる日本のモノの豊かさが、子どもたちから本来のきらきらした好奇心を奪っているのかもしれない、ということ。そしてタイの子どもたちと向き合う際にも、絵本や教材などを与えるだけが果たしてよい支援なのか、と考えるようになったのです。
おとなの応援をしたい!
2004年末のスマトラ島沖地震で津波被災地の支援スタッフとして現地に赴いた2年の間に、ムアイさんとギップさんと出会いました。被災後数か月間、世界各地から次々に支援の手が差し伸べられましたが、多くは「アイスを配り、鉛筆を配るだけ」。その光景を見ながら、被災した子どもたちにとって本当に大切なことは、そばにいるおとなたちが子どもたちの安心できる環境を作り、心をケアし続けることなのではないか、と久美さんは考えました。思い切ってムアイさんとギップさんに話してみると2人は深く共感。「周りのおとなを応援しよう!」。そのときこそ3人によるマレットファンが誕生した瞬間だったのかもしれません。
久美さんたち3人のつくり出す場…それは、おとなたちが笑顔で学び、子どもたちがいきいきと遊ぶ空間です。3人の熱意によって、タイ各地では子どもたちにもおとなたちにも未来への夢がひろがっています。
「パワフル」だと聞いていた久美さんがつくり出すあたたかな活動の輪は、日本とタイを愛する日本人として、子どもたちの未来を願う母としてとても誇らしく、その先の子どもたちの明るい未来を想像しながら今自分にできることを考えるきっかけになりました。久美さんたちの今の活動拠点はタイですが、日本の子どもたちにも自分らしく輝ける未来を築いてほしいという思いから、日本の各地でも子どもたちに関わるおとなたちを元気にする活動を行なっています。
マレットファン http://maletfan.org/jp/
取材執筆:堀川恵水
編集&デザイン:サイアムノオト