教育NGOのマレットファンを応援するシリーズ第7回は、マレットファン理事長であるウィタワット教授です。ウィタワット教授は長年チュラロンコン大学で社会学の教鞭を執られてきた方。マレットファンスタート時の事務所を提供した方でもあります。その出会いについてお聞きしました。

 

 

「お金もないし、コネもない。何にもないけれど、自分たちのやりたいことがある。その夢をどうしても実現したい」。そんな3人がいると聞いて驚いた。それがマレットファンだったんだよ。

 

 私はバンコク最大のスラムであるクロントイ地区を拠点に教育支援をするドゥアン・プラティープ財団を長年サポートしてきた。NGOのことはよく知っている。だが、財政や人脈の後ろ盾もなく身銭を切ってまで人のために活動しようとするなんて話はこれまで聞いたことがなかったから驚いたんだ。

 それで彼女たちがやろうとしていることを聞いてみると、子どもたちのための図書館を作ったり、子どもたちを集めて本を楽しく読んだり、といった活動だと言うんだ。それまでタイであまり実現されていなかったが大切なことだ。素晴らしいと思ってな、まだ事務所の場所もないというから、それなら私のうちを使えばいいと言ったんだ。

 私は教授を引退してから地方暮らしを楽しんでいる。その頃は一年の大半を北部のランパーンで暮らしていたし、彼らの活動の支えになるならと、空いていた私の書斎を提供した。だからマレットファンのスタートは机だけ。それでも彼女たちは一生懸命に仕事をした。これまでの経験をいかして、今度は自分たちの信念で活動する。私はそれからも客観的に彼女たちの活動を見ていたんだ。情熱を持って道を切り開いていく姿、それはまさにファンタスティックだったよ。

 

 

マレットファンの周りには手を差し伸べてくれる人が現れる。

 久美は日本で支援の輪を広げていった。しばらく経った頃、私は言ったんだ。そろそろ活動を公にしたらどうだ、NPOを作ってはどうだと。するとどうやってか知らないが、財団の設立に必要な役員を各界から集めてきた。偶然なことに、その一人はチュラロンコン大学の私の教え子でな。嬉しい再会だったよ。それから設立資金。彼女たちの熱意を知り、決して多くはない自分の貯金を割いて寄付してくれた人がいた。そうした支えがあってマレットファンは見事にNPOになったんだ。先日、マレットファンは5歳の誕生日を迎えたよ。

 私の書斎も手狭になってきたようなので、もっと大きな場所に事務所を移したらどうだ、もっと活動を大きくしたらどうだ、と言ったんだ。すると、また人が現れた。空いているオフィスを使ってくれという人だ。

 じつに不思議なことだが、マレットファンの周りには自ずと手を差し伸べてくれる人がいる。そうしてマレットファンは夢を実現していくんだ。本当に驚かされる。これからもそうやってマレットファンは夢を実現していくだろうと思っているよ。

 

ウィタワット教授をはさんでマレットファンのムアイさん(左)とギップさん(右)。