「マレットファンの周りの輝く人」第11回。ブラパー大学の図書館で館長を務めるイー先生にお話を伺いました。

 

 

バンコクから車で約1時間半、チョンブリー県にある公立ブラパー大学の図書館を訪ねました。広々した明るいキャンパス内にある7階建ての立派な図書館が「BUU Library」。館長のイー先生とスタッフの皆さんに温かく迎えられ、館内を案内していただきました。

 


ブラパー大学図書館の入口。立派な建物です。

 

試験明けだったからでしょうかリラックスした雰囲気が漂い、試験明けだったにもかかわらず学生で賑わっています。机が並ぶラーニングスペースでは学生たちが勉強したり本を読んだりと図書館ならではの光景。一方で興味深かったのは、学生たちが街のカフェで仕事をするノマドのようにノートパソコンに向かったり、ソファでスマホ片手に友達同士でくつろいだり、ホームシアターで肩を寄せ合いながら夢中でNetflixの人気映画を鑑賞している様子。「ここって大学の図書館だっけ?街中のモールみたい!」と驚かされました。

 


自宅のように床に座って低いテーブルで勉強する学生も。

 


ラーニングスペースでは学生たちが熱心に勉強中。

 

イー先生は副館長を経て館長となり、25年間にわたってこの大学図書館の改革を続けてきました。「学生は街に遊びに行きたいというのが普通でしょ。でも街で映画を見たり、本を買ったり、カフェに行けばお金がかかる。いろんな誘惑もあります。それなら街に出かけてやることをこの図書館でもできるようにすればいいと考えたのです。大学図書館の目的は読書や学習はもちろんですがそれだけではありません。家にいるようにくつろいでもらうのもいいですし、友達との時間を楽しむのもいい。お金も使わずにすみますし(笑)。私たちは学生たちに図書館をどんどん利用してもらいたいのです。来てもらえればおのずと本との出会いもありますからね」。

 


1階には24時間利用できる読書スペース。隣接してカフェも。

 


試験明けはホームシアターで友達と楽しく映画鑑賞。

 

 

図書館を利用したくなる仕掛けが次々と展開

図書館はすべてオンライン化され、IDとパスワードを登録すれば本を借りるのはもちろん、館内ではなんでも利用できる仕組みです。映画やドラマの最新作も取り揃えたホームシアターは人気で、ウェブ上で予約をすると時間になればSMSで知らせてもらえるサービスつき。また学生たちに欠かせないコミュニケーションツールであるスマホが利用しやすいようにと、強力なWIFIと電源もばっちり完備されています。

 


今どきの学生にスマホは必須アイテム。

 

もちろん図書館の本領である蔵書も充実。小説や翻訳本や英字本や絵本などあらゆるジャンルにわたって毎月100冊ずつ増やしています。街の書店で人気がある本や受賞本もすぐに購入して館内の一番目立つ場所にある「最新図書コーナー」で紹介、学生たちの関心も高いそうです。学生や先生から書籍のリクエストがあれば迅速に取り寄せ、キャンパス内をカラフルで楽しい図書車両が移動して貸し出しする「Book Mobile」を始めたり、ブックフェアを開催して古い本を安く販売したり、本がゆっくり読めるカフェをオープンしたり、24時間利用可能な読書スペースを設けるなど、図書館を身近に感じて利用につなげる創意工夫があちこちに見られます。

 


次の授業までクラスメートとゲームで時間つぶし。

 

 

地域にもどんどん進出、本との出会いの場を提供

BUU Libraryは地域に開かれた図書館でもあります。女性刑務所に出向いて、本を読んだり本のテーマに沿った劇をする図書活動は毎年恒例でもう11年目。県内の僻地にある小学校への移動図書館や図書活動も子どもたちから心待ちにされています。また高齢者向けの図書活動も好評で、引きこもりがちな高齢者を誘い出し、ゲームや劇などで楽しい時間を過ごしてもらうほか、参加者同士の交流も促します。図書をきっかけにしたこうした地域活動貢献も図書館では熱心に行っています。

 


教育学部の実践用に絵本コーナーも。地域の子ども来ます。

 

 

利用者たちの声にスピードと工夫で応える

イー先生をはじめスタッフの方々の話を聞いていると、この図書館をよりよくしていきたいという情熱が伝わってきます。利用者である学生や先生たちからの要望や提案はカウンターでもメールやSNSでも常に受け付けており、スタッフ一人ひとりがそれに応えようと動いています。図書館のコンセプトである”read, learn and connect”の「connect(つながる)」の精神が運営側にしっかり根づいているのを感じました。

 


いい図書館にしたいと熱心に活動するスタッフの皆さん。

 

先日も「試験期間中は開館時間を延長してほしい」という要望があり、次の試験期間は夜中0時まで開館を延ばすことを決めました。椅子が足りないという声には、校内で不要になった椅子を集めてきました。「買えばお金がかかるけれど、古い椅子にカラフルなクッションをつけて置いてみたんですよ。お金をかけなくても工夫すればいろんなことができるんです」とイー先生。柔軟な発想とすばやい行動力でニーズに応える。目の行き届いたこんな素晴らしい図書館が利用できる学生たちはしあわせだなぁとしみじみ思う1日でした。

 

 

ブラパー大学図書館ウェブサイト BUU Library : https://www.lib.buu.ac.th/