教育NGOのマレットファンを応援するシリーズ第8回は、マレットファンの活動拠点である事務所のオーナー、クワンさんです。作家でもあり、事業者でもあるクワンさんはマレットファンの事務所のオーナー。今の場所に拠点を構えてからマレットファンの活躍の場はどんどん広がっています。マレットファンとの出会いについてクワンさんにお聞きしました。

 

 

「その日はバンコクの中心部で開催されていた講習会に参加していて、休憩時間に外に出たら、何かのチラシを机の上に並べている人がいたんです。何かしら?と思って話しかけてみました。それがギップさんだったんですよ」。

 出会いとはあるとき突然やってくるもの。その後、二人の会話は続きます。

「あなたはここで何をしているの?」
「私たちはマレットファンと言います。今日は別会場で布を使っておもちゃを作るワークショップをやっているんです」
「マレットファンってどんなことをしているの?」
「子どもたちのために本を読んだりおもちゃを作ったり、いろんな活動をしているんです」
「どこにあるの?」
「それが、今ちょうど事務所を探しているところなんです」
「あら。じゃ、うちが空いてるから使っていいわよ」

 ギップさんから「事務所を貸してくれるという親切な人がいる」と聞いた久美さんもムアイさんも最初は信じられない思いだったそうです。

 

 

彼女たちは素晴らしい仕事をしている、と思ったんです。

 その後改めて3人はクワンさんとお会いすることになりました。建物を案内してもらうと、事務所スペースもあり、ワークショップができそうな広々したスペースもあり、大きな倉庫もあって、マレットファンがこれから活動を広げていくには理想的な場所です。

「お金はないんですけど大丈夫ですか?」とたずねると、「水道代と電気代だけでいいわよ」とクワンさん。なんとまぁ。トントン拍子に話がまとまって、マレットファンの新天地での活動が始まりました。

 ところで、お金もないという見知らぬ人たちに部屋を貸す不安はなかったのでしょうか。クワンさんは笑顔で言います。
「会ってみたら3人のかわいい女性たちでしょ。一目見て信頼できました。ときどきここで開催しているえほん展などをのぞかせてもらっていますが、彼女たちは素晴らしい仕事をしているし、ここを使ってもらってとてもよかったと思ってるんですよ」。

 自分は建物を持っているだけと話すクワンさん。経営する出版社も他へ引っ越して空き家になっていました。「誰も使わないのももったいないし、社会的に良い活動をしている人たちに使ってもらえるなら喜んで」というクワンさん。

 マレットファンを温かく見守る人がここにもいました。

 

エッセイと旅の写真を織り交ぜたきれいな一冊。クワンさんの著書。