教育NGOのマレットファンを応援するシリーズ第6弾は、絵本作家のご夫婦、リトルブラックオズ・スタジオ(Littleblackoz Studio)のボムさんとオィさんを、バンコク郊外の自宅兼スタジオに訪ねました。

 

 

 発売されたばかりという絵本「บ“บ“バーバー)」の表紙を一目見て惹かれてしまいました。子どもたちの前に突然現れた主人公のバーバーは、こわそうな顔をした見たこともないような生き物で、発する言葉は「バー、バー」だけ。全身毛むくじゃらのバーバーですが、頭にはかわいらしいお花のツノがあって、しあわせな時はお花が咲き、悲しい時は枯れちゃうのだそうです。

 

2018年9月発売の「บาบา(バーバー)」。に。バーバーの目は二人の愛猫ローニンの目だそうです。

 

 「バーバーのモデルはボムさん」と教えてくれたのはオイさんです。大きな身体で朴訥な印象のボムさんと、小柄でくるくるした大きな目がキュートなオイさんは、美術大学の同級生で今はご夫婦。15年ほど前から二人で「リトルブラックオズ・スタジオ(Littleblackoz Studio)」という制作ユニットを立ち上げ、絵本作家として活躍しています。

 

 

作品のアイディアは身近なところにあふれている

 「バーバー」のアイディアはこんなことから生まれたそうです。ある日、子どもとお友達になったボムさん。楽しい時間を過ごしていましたが、お母さんはボムさんのちょっとこわそうな感じを見て心配になり、子どもを連れて家に帰ってしまいます。でもその子はボムさんが大好きなんですね。ボムさんに出会ったことで少し変わりました。その変化がうれしくて、今度はお母さん自身が子どもを連れてボムさんのところに来ました。「これからもよろしくね」と。

 そんな出来事もあって、この絵本では「見た目だけで決めないでね」というメッセージを伝えたいと考えたそうです。二人の作風はじわりじわりと心にしみ込んでくる温かい絵ときれいな色、そして日々の暮らしからこぼれ落ちたようなやさしいおはなしです。

 こんなこともありました。ある日、ボムさんが子どもにお菓子をあげると、その子はお菓子を持って逃げて行ってしまいました。その後のある雨の日、ピンポーンと家のベルが鳴りました。出てみるとその子がいて「自分で作って持ってきたんだ。あげるね」とお菓子をくれたのです。その子はお菓子をもらってうれしかったけど、その気持ちをどう表したらいいかわからなくて逃げちゃったのかもしれません。

「お菓子のおすそ分けをしたらお菓子が戻ってきた。それってしあわせをおすそ分けしたらしあわせが戻ってくる、ということだと思うんです。しあわせのおすそ分けが広がっていくってすごくしあわせなことですね」。

 

 

子どもの気持ちになって、時間をかけて丁寧に本を作る

 二人が大切にしているのは、子どもと同じ目線になるということ。子どもが楽しいと思う絵本だったらきっと好きになる。そうすれば二人の伝えたいこともきっと伝わる。ボムさんはこう言います。「だって子どもの頃、先生や親にダメだって言われても言うこと聞かなかったけど、友達に言われたらそうだなって思ってたもん」。

 絵本は子どもに言い聞かせたいことを表現したものではなくて、子どもが自由に想像をふくらませたり、自分で考えたりするものでありたい、と二人は考えています。

 今構想中の絵本は、路地の奥の奥にある料理屋さんのおはなし。お客さんはなかなか来ないけど、来てくれて「おいしい」と心から思ってくれたら、お店の評判は口コミで少しずつ広がってお客さんもまた来てくれるし、新しいお客さんもきっと来てくれる。

 「絵本作りは簡単ではありません。アイディアを考えるのは長い時間がかかるし、子どもたちは真剣に絵本を読みますから、がっかりさせたり落ち度のないように何度も内容を練り直します。大変です。でも私たちは子どもたちをしあわせにできる作品を作ることをしあわせだと感じています。時間はかかっても、いい作品を作り続けていきたいと思っています」。二人はそうして、自宅2階の制作スタジオで、ちゃぶ台に向かい合って日々ものがたりを育んでいます。

 

「バーバー」の原画はソフトパステルで。

 

自宅2階にある明るい制作スタジオ。窓側はオイさん、壁側がボムさん。

 

机の上には二人のキャラクター。

 

 

ボムさんとオィさん、マレットファンとの出会いは?

マレットファンが開催した加藤啓子先生の絵本のワークショップに参加しました。子どもに楽しいと感じてもらうことを一番大切にしているマレットファンとは価値観も似ていて、親しくさせてもらっています。イベントでも私たちの本をよく読んでくれていて子どもたちの反応もすぐ教えてくれるんです。子どもたちの声は制作に欠かせません。

マレットファンのギップさんより〜 最初からファンです♪ 二人の絵本は子どもたちがリラックスして心から楽しめるもの。私たちも大好きな絵本です。売れることよりも、子どもの心を大切に思い、絵とおはなしを時間をかけて作っていて、すごいなと思います。タイ発のいい絵本をたくさん作ってほしいです。私たちもうれしいし、がんばれますから!

 

 

ボムさんとオイさんのマレットファン(夢のたね)は?

ひとつひとつ丁寧に、いい作品を作り続けること。子どもたちのしあわせな顔が僕たちのしあわせです。

 

 

Littleblackoz  Studio : https://littleblackozstudio.blogspot.com