子どもが楽しむには大人も楽しくなきゃ。折り紙のワークショップでは参加者の先生たちが子どものように楽しんでいるのが印象的でした。そんなマレットファンを率いる一人、ムアイさんに会いに行ってきました。

 

 

 

 

「サワディーカ〜〜〜ップ! ボクの名前はリンノーイ! 今日はみんなと会えてと〜〜ってもうれしいよっ!」。サルくんがイキイキ喋り出すと、人形を操るムアイさんの表情もパッと輝き始めました。

 

 

初めて見た人形劇。楽しくて、楽しくて

 ムアイさんが人形劇に出会ったのは18歳のとき。日本から来た「おはなしキャラバン」の人形劇公演を見てすっかり心を奪われました。自分でもやってみたくなり、人形の扱い方を教わって練習に励みました。そしてラオスやカンボジアの公演に参加させてもらいながら腕を磨いていったのです。

 当時のムアイさんの仕事は、移動図書館でタイの各地を隅々まで巡り、子どもたちが本と出会う場をつくること。全国には本を知らない子どもがまだたくさんいました。本は開いてみれば楽しいのに、本を知らない子どもたちはなんだか本は難しそうだと感じてしまいます。そんなときこそ人形たちの出番。ムアイさんが人形と一緒に登場すると、みんなは「わ〜!」と歓声をあげ、すっかり笑顔になった子どもたちに、楽しい気持ちのまま本と出会ってもらうことができました。マレットファンとなった今も、ムアイさんの人形劇は子どもたちの心をつかみ続けています。

 

 

子どもが楽しいと思える環境を作るのは大人の役目

 「どうすれば子どもは楽しいって思うかな?」といつもムアイさんは考えます。なぜなら、楽しいと感じれば「なになに?」と興味がわいて、もっと知りたくなるから。本に興味が出れば読みたくなるし、もっと読んでいろんなことを知りたくなって、次第に世界が広がっていくのです。その環境を作るのは大人の役目であり、ムアイさんの仕事だと考えています。

 タイ南部、マレーシアとの国境にあるパタニー県。紛争地域にある図書館で絵本のイベントを行ったときのことです。到着した会場の図書館は人でいっぱい、本との出会いを心待ちにする子どもたちでした。危険だという理由でなかなか人が訪れない地域。そんな環境に暮らす子どもたちのために、絵本と触れ合うイベントを実現しようと奔走したのは、現地で読書推進に取り組む大人たちでした。そんな大人たちの熱心な姿に子どもたちは心を動かされたのでしょう。「なんか楽しそう〜♪」とこの日がどんどん楽しみになって、会場は熱気に包まれたのだと思います。

 こんな風に、大人は子どもが楽しさを見つけるきっかけをつくることができます。それはきっと子どもの未来につながるはず。影響力のある大きな存在こそ、力を持たない小さな存在を思いやるべきだ、とムアイさんは思っています。

 バンコクのスラムで育ったムアイさんは、人形劇と出会い、人生の道が大きく開かれました。興味を持ち、学びたいと頑張ったことでたくさんの人と巡り会い、可能性が広がりました。そんなすばらしい経験を、たくさんの子どもたちにも体験してほしいと願っています。

 

 

マレットファン http://maletfan.org/jp/